神話
「何だよ、これ…」
俺は、間違っていたのか?
俺は、俺は…!!
「ゼスファーク…お前は何者だ?お前に一瞬にして多くの生命を壊す権利が、あったというのか?
仮にも神だから、神ならば全て思い通りにすれば良いと、本気で思っていたか?」
全知全能の有翼の神が、堕ちた慈悲の神を責める。
そうだ、俺は神だ。
だから殺した。愚かなる民を
「ユリクシル…裁きの時だ。ゼスファークに安らかなる眠りを」
「………」
叡智の女神と民に親しまれ呼ばれる女神が無言で裁きの剣を構える。
「ゼス…大丈夫だから……」
そう、悲しい瞳で見つめながら、女神は裏切り者の心臓をめがけ、思いっきり剣をついた。
昔話
「ゼス、ここは美しいわね。」
恋人が微笑みながら目前に広がる花畑に魅入っている。
「そうだな…お前も女らしいとこがあったってワケだ。」
美しい女神が、いたずらっぽい神の足を思い切り踏む。
「あだ!!」
二人は生まれた時から恋人であった。全知全能の神ナスラティカシスが、人の生の象徴として創った人神達
であった。
人や動物が生まれる前から存在し、役目は民や地上を見守る事であった。
時々人の夢の中や、目の前に現れては数々の助言を行っていた。
ただし全知全能神ナスラは直接の手は下すなと、二人の人神によく聞かせていた。
「見ろ…ユリクシル。またあいつら戦争をやっている」
遠くを睨む男神。その視線の先には剣を交わし合い、命を奪い合う人間達の姿だった。
「…仕方ないわ。この時代も、そうなのよ」
諦めたように女神が言う。いつの時代も殺し合いは続く。領地の為、国の為、家族の命の為。
「何でそんな事をするんだ。痛いだろ、死んだら消えるんだぞ?」
純粋な男神は悲痛に顔を歪ませて呟いた。彼は誰よりも痛みが解る慈悲神であった。
「…そうね。それじゃあ戦争は駄目だと皆に教えましょう。」
女神は人同士が傷付け合う度、彼が辛そうにしているのを知っている。思い知らされている。
だから何度でも、人々に助言をしてきた。人を殺ぶむなと。
だけどどうしてか人は戦争を止めない。終わらない。
女神だって戦争を止めたかった。彼ほどの人を想う心は無いが、目の前にいる、
神の心の中の涙を止めたかった。
二人は堂々と街を歩く。多くの人は気付かない。だけど、ごく僅かな人間は人神に気付くと地に頭を付けた。
「やだ、あそこまでしなくても良いのに。」
深く頭を下げる人々を見ると、女神は困ったように隣に告げる。
「本人達はやりたいんだってさ。ま、いいじゃん。大地も喜ぶさ」
慈悲神はそう言って歯を見せて笑った。
彼は基本的には能天気だ。人が苦しんでいるのさえ見なければ、彼が怒りに震える事は無い。
屋外マーケットで彼は美味しそうな林檎を見つけた。
「へぇー、なかなか美しい実だな。育てた人間が良かったんだな。」
男神は店主に向かってにっこり笑う。
「あぁどうも。良かったら買いねぇ」
訛った方言で店主は今朝もいだ実をすすめた。ここの店主は二人の事を知らないようだった。
女神が困ったように返す。
「お金は持ち合わせていないの。全部売れると良いわね。」
神は食事をしなくても、主神の許す限り生き続ける事ができる。だから無理に食べる必要は無い。
「なぁ、もし悩みがあるなら俺らが聞いてやる。その代わりに林檎を一つくれないか?」
またこの人は…。女神が頭を抱える。人と同じ事をしたがるのだ、この男は。
「はぁ〜、変な事言う人らやねぇ。それなら悩みがあるけんど聞いてくれるけ?」
店の主人が可笑しそうに笑った。
男神は興味津々といった様子で顔を近付ける。女神はやれやれと男神に溜息を送る。
店主は突然真顔になってこう言った。
「うちには小さな子供がおるけん、名前はクロードにルミア。二人ともまだ何にも知らん幼い子供らや。
せやのに軍人は無理言って軍に入れようとする。あの子らは娘の子でなぁ。娘はうちの爺さんに似て
魔術の才に優れとって…。うちの孫らも例外無く人より魔力が高ぅて。そんで英才教育で軍師まで育てたいん
やそうや…。でもな…あの子らは戦は嫌や言うとる。そんな子らを軍人にさせとうない。でも最近は脅迫まで
してきて…」
女神は隣を見た。男神は熱心に聞いている。
神話の続き
女神は有翼の神に向かって頭を垂れて嘆願する。
「ナスラ様。ゼスはずっと悩み苦しんでいたのです。いつも、死んでゆく者達の痛みを感じていたのです。
あの人が望んで虐殺したとは到底思えません。傍に居た私が証言します…。
だからもう一度ゼスにチャンスを与えて下さい!」
「何故?殺された者は。神に拒絶された者達はどうするのだ?人神故に次を与えたとして、
人神に殺された者達に次を与える事など不可能なのだぞ。」
約束したはずだ。手を下してはいけないと。と、有翼の神は言った。
「ならば、やり直せる彼にはやらねばならない事があるでしょう。ナスラ様。
ナスラ様はかつてこう仰りました。『存在する全ての者は必ず過ちを犯す』と。
ゼスだって例外では無いはずです。過ちを犯したが故に次に生かせる物があるはずです。
もし、もしもゼスが再び戻る事があるなら、私が正しい道へと命を懸けて導きましょう。」
ユリクシルは必死に食いついた。彼が過ちを犯したのは悲しい事実。
だけど、そこへ至るまでの経緯を私は知っている。安らぎとは程遠い民の生活。
一部の者達による、非人道的な行い。欲に溺れ、這い上がる事を忘れた愚人。
そして何より……神の声が聞こえなくなった民。涙、血、悲鳴…その影にほくそ笑む悪魔に魅入られた者達。
『狂ってる。理想とかけ離れてる。どうして皆生まれなければならない?生まれなければ、苦しむ事も無いのに』
いつも彼が呟く言葉。既に何百年も前から彼の心は悲鳴を上げながらひび割れ、壊れていたのかもしれない。
「ナスラ様…何故人は生きているのでしょうか?」
感化されたのかもしれない。ふと、思い出したように呟く。
「知る必要は無い。知らぬ方が良い。私とて単なる駒なのだから。」
「駒…?」
「我も他の時空では人と同じだ。延々と続くループ。ユリクシル、この世界は単なる『神』の戯れの一つだ。
小さな別の時空を手玉に取って観賞し、楽しんでいる。されとてその『神』の世界も、他の『神』によって
創られ観賞されているだけの物やも知れぬ」
馬鹿な。ではこの命も、民の命も悪戯に造られた……それが本当ならと女神は絶望した。
人々が苦しんでも、殺し合いをしても……それは全て『神』にとって造作もなく。余興の一つであると言うのだ。
この世界を見ている『神』は、楽しんで戦争を眺めているのかもしれない。平和を嫌っているのかもしれない。
「だから我々は手を下してはならない。小さな命をなるべく消さぬ為。統一、管理をしては観賞している神は
面白くないのだ。だから神は人に欲を与え、醜さに溢れた世界を眺め、せせら笑っているのだ」
「そうだな……良かろう。ゼスファークを再生しよう。」
それは唐突に。頑なだった主神がゼスファークの再生を許可したのだ。
「我々とて容易い命だ。『神』にとっては生きようが絶えようが興味の無い出来事なのだろう。
幸い我には力がある。ゼスファークの記憶もある。可能だ。」
「それでは…!」
「だが人神の力は危険だ。だから二つに分ける。濃縮の力と拡散の力を持つゼスを二人作る。」
「二人って…どういう…?」
「あるだろう、そういうシステムが。双子だ。」
破壊神
「貴方達は助けてくれた…軍人に殺されそうになった私達を。そして貴方は腐った人間どもの為に消された…」
クロードが涙を流す。
双子の頭に黒い記憶が流れる。大勢の軍人。子供を庇って剣を受けて死ぬ老婆。子供を殺そうとする軍人。
汚い人間ども………
「そうだ……全て思い出した。俺はこの汚い世界を浄化する為に再生を受け入れたんだ…」
リリスとジニアが一言違わず同時に呟く。リリスがジニアにシンクロしている。
ディータと剣を交わしていたグランが体を強張らせる。
「リリス駄目だ!それは過去の出来事だ!今のお前とはもう関係ない!!」
必死にグランが叫ぶ。双子を見てニヤけるクロード。
「時は満ちた!!今こそ我が主神ゼスファーク様が降臨する!」
かつてユリクシルが双子を預けた、双子の父クロードが、焦れるようにそう叫ぶ。
「消えろ腐れ燃えろ砕けろ!!それが私の望みだ!さあ、息子達よ……この世界を塵にしてしまえ!!」
『狂ってる……だけど既にこの世界の均衡は崩れている……だから姉さん、この世界を壊そう。
最初からやり直すんだよ…。僕達にはそれができる…。』
『……………ハッハ、ハ……無理よジニア。そんな事できるわけない』
『大丈夫さ…僕らは人神だったじゃないか』
『無理って言ってんのよ!私は今のままの世界が好き。家族がいる。ギルドの仲間達、お父様、ディータ、
それに……あんた。私は全部大事なの。どれ一つだって、進んで壊そうなんて絶対思わない!!』
『僕はずっと独りだったよ。きっとこの時の為の準備だったんだ…。大事な物なんて何一つない。』
『ローラは?私知ってるわ。生まれた時からずっとアンタの傍にいてくれて…彼女はアンタを一番大事だと
思ってる。それにアンタだってローラを大切にしてる』
『…………ははは……そんなわけ無いだろ?あいつとはいつも喧嘩ばっかしてたじゃないか…』
『私は喧嘩してるアンタ達見てたけど…その中には深い…』
『止めろよ!!俺はずっとこのうざったい世界を潰したくて仕方なかったんだ!!ローラだって?
ローラだっていつか死ぬんだ。それならいつ死なせてやっても同じじゃないか!!』
『何考えてんのあんた…同じじゃないじゃない。ローラに限らず皆生きてれば思い出ができる。
楽しい事嬉しい事…そりゃ辛い事もあるだろうけど…同じじゃない。濃さが変わるのよ!重みが変わるのよ!!』
『煩い…うるさい!!どうせお前は欠陥品、ただの俺のオマケだったんだよ!!
なのにそんな分際で俺に指図するな!!』
『…………っ!』
『そうだ…お前の意見なんて要らないんだ……だってゼスファークは俺だもの。お前じゃない。
だから決定権は俺にある。……その力俺が貰う!!』
『!!』
リリスが倒れる。そしてジニアの姿が別の青年の姿に成り変った。
「ああ…懐かしい…私達を救ってくれる神よ……」
クロードは再び涙を流す。かつて慈悲神と呼ばれた破壊の神が、クロードに微笑む。
「お前も壊れてしまったのか…可哀想に。今楽にしてやろう…」
悦に浸るクロードの顔が強張る。その瞬間彼の頭が弾け飛んだ。
『嫌!!いやぁ!!』
リリスの意識が人神の中で泣き叫ぶ。ジニアは無視した。
恐ろしい風景。人の力では到底敵うことの無い神の力。
破壊神を間近に見て、初めてディータとその父グランが恐怖に飲み込まれる。
誰も止めるどころか動く事さえできない中、入り口から女性が現れる。双子の知る人物…。
破壊神は目を大きく見開いた。ローラだった。
「何でここにいる…」
少女が歩きながら答えた。
「あんたを張っ倒しに来たのよ」
少女がそんな事できるはずがない。しかも彼女はとても非力な事を双子はよく知っていた。
『ローラ!あんた下がりなさい!今のコイツはローラすら殺そうとしてんのよ!?』
聞こえるはずの無い、届くはずの無い破壊神の意識の中で叫ぶ叫び声。
「大丈夫リリス。私はあんた達を助けたいの。その為にここまで来たのよ。もうこれ以上」
ジニアはおかしさに気付く。ここへ来る前にローラの家に行った。でも両親はローラを知らないという。
そして今、その場に居た人間達には聞こえていないリリスの声が、ローラには聞こえている。
破壊神が彼女に向かって無数の光槍を降らす。
轟く爆音。巻き起こる爆風。リリスもディータもグランも、目の前で無残に殺される少女を目の当たりにし、
絶望に打ちひしがれた。
「罪を重ねさせるわけにはいかないの」
はずだった。
破壊神が笑っている。
「そうか…お前か」
彼女は必死になって結界を張っていたようだった。
傷一つない。小さく華奢な体には一つの傷もついていない。
しかし人神の力は先ほど殺された絶大の力を誇る魔術師の結界すら容易く破っていたはず。
「やっぱりこの体じゃ駄目ね。自由に力を使いこなせない」
息を乱れさせながらそう言うと少女は霧のように溶け、大人の女性の姿に姿を変えた。
現れた女性は破壊神ゼスファークがかつて愛した人神……ユリクシルだった。
女神
「ずっと監視していたわけか。俺らが生まれたのを知って…いつ消そうかとアイツと相談してたわけだ」
破壊神が憎悪を煮え滾らせて睨みつける。その中に裏切られた哀しみを漂わせながら。
「俺に止めを刺したよな…お前。結構あっさり殺してくれたもんだ。今度は二回目ってか?
そんなに簡単に殺されてたまるかよ。あの時の俺は普通じゃなかったんだ」
イライラが募る。彼女には裏切られたくなかった。生まれた時からずっと一緒に居た彼女に。
女神は真っ直ぐ見つめ、淡々と告げた。
「そうよ。貴方を全力で張り倒しに来たの。あんたのせいで私の命まで危うくなったんだから
これぐらい平気でしょ」
女神は分かっている。どう説き伏せようが今の彼に彼女の言葉は届かない事を。
要は力で捻じ伏せる。そんな事ができるものなのか自信は無かった。だけどやらねばならない。
自分が殺されればあの御方が動く。人神そのものの存在を消して下さるのだ。
もしあの冷酷な御方に愛があるならば、この世界は主神もろとも消え去るだろうが。
「どういう意味だ。お前はずっと安全な場所でのうのうと使命を果たしていただろう。」
自分が生まれた隣の家で。自分達の監視を行っていただろうに。
「あんたを止められなければ私も消えるの。そうしてもらえるようお願いしたのよ」
ユリクシルは嘲笑いながら言った。その言葉を男神は勿論信じない。
「お前は醜いな…。綺麗と思った事も無いが醜いとも思った事が無かったのに…。お前は醜い…!」
人と同じだ。と男神は思い込んだ。勘が違うと見極めていても。
ゼスファークは手に槍を構想する。すると念じたように槍が現れた。
戦いが始まる。
女神も遅れながら手に長剣を構想する。手元に長剣が現れた。
ドレスの裾も動きやすいように構成する。
「俺は今を潰して新しい世界を創る。お前は連れて行ってやらないよ。ユリクシル」
お前を殺す。そう告げられたのだ。
ゼスの放った自然界では存在し得ない異常なエネルギーの解放を女神は受け止め分解する。
そうしなければこの世界はもっと傾くからだ。
リリスも気付いていた。ローラ…もといこの女神は全てを救おうとしている。
世界だけでなく罪を犯した自分達さえも。だけど勝つのは破壊の神である事は誰の目にも分かった。
今止めるべきなのは双子の片割れ…ジニアだった。
男神はただひたすらに攻撃をする。女神は反撃する間も無かった。
相手を攻撃する前に異常な力をいちいち分解しなければならないのだ。
(やはり駄目か…)
女神は既に自分と世界の死を先延ばしにする方法しか考えられなくなっていた。
ゼスを殺したのは自分。その事実が選択肢を大幅に狭めていた。
「私は…貴方と共に生きて幸せに過ごしたかっただけなのに…」
女神は泣いた。そして男神が彼女に止めを刺そうとしたその瞬間、男が頭を抱え苦しみだした。
双子に分ける。力を分ける為だけのその行為が、もう一つの作用をもたらした。
自分で自分を止める。その選択肢をもたらした。
『絶対させない。彼女を殺して一番悔やむのは自分の癖に面倒臭い事するんじゃないわよ。
もし私があんたと血繋がってなかったらわざわざこんな事に首なんか突っ込んでやらないとこだったんだから。』
「邪魔するな…!!お前はいつもいつも俺の邪魔をする!!今やらなきゃお前も殺されるんだ!!」
独り言。違う、意識の中のリリスに対して話している。
『言ったでしょ、ヴァカ野郎。絶対無理だって。私が止めるからよ。あんたを殴ってでも止める。
もしローラ達に殺されるとしても人に多大な迷惑を掛けてる自分勝手な馬鹿弟を野放しにするなんて、
優しい姉としてそんな情けない事できないのよ!』
「自分で優しい姉言うな気持ち悪い。それに何処が優しいだ、愚か者!!」
リリスの意識が暴れだして出て行こうとする。それを必死に止めようとするジニア。
ゼスはまだ頭を抱えている。それは彼を倒すには絶好のチャンスだった。倒すには。
だけど女神は動かない。リリスを信じて待つ事に決めたのだ。
これが彼が天界へ戻れる、最後のチャンスだった。
破壊神が霧のように溶けてジニアに戻る。床に倒れていたリリスも目を覚ました。
リリスが勝ったようだった。女神は嬉しくて再び涙目になる。
女神は限界まで槍を弾き、力を分解し…立てない程に疲れ果てていた。思わずその場に座り込む。
リリスがジニアに向かって歩き出す。目の前に立つと、しゃがみ込んだ彼を見下ろした。
「世界世界言うけどあんたはこんなに小さいのよ。んなデカイ事はデカイ人が考えりゃ良いのよ。
世界が消えるならどうぞご自由に。でもわざわざあんたが消す事ないでしょ。ずっと孤独だったからって
迷惑なやり方で拗ねてんじゃないわよ」
「やっぱり姉さんは邪魔だ。完全にあんたから力を取り出さなきゃね。」
ジニアが頭を上げるとその顔は笑っていた。即座に魔法を唱え、姉に光弾を放つ。
「!!」
隙だらけの姉は避ける事ができない。咄嗟にディータが彼女を突き飛ばした。
昔話
「ねぇジニア」
自分と同じ程の幼い少女が自分に話し掛ける。
ジニアが生まれて6年経っていた。
彼が生まれてすぐ、父は何処かへ行方をくらまし、双子の姉も行方が分からない。
幼い少年は隣に住むフラン家に身を置いていた。
「一緒に積み木で遊びましょ」
一人で積み木で遊んでいる少年に少女が交じろうとした。
少女が積み木に手を付けた途端に彼はその場を立ち去った。
「…………」
少女は追いかけた。
それから3年後。二人は9歳となり、魔術学院に預けられる事になる。
ローラは何度も彼を見掛ける。だけど彼の傍に友人を見掛けた事は一度も無い。
教室で一人、本を読んでいるジニアに声を掛けた。
「どうしていつも一人なの?友達できないの?」
すると少年は嘲ったように答えた。
「違うよローラ。できないんじゃなくて作らないんだ。」
少女には意味が分からなかった。
お前も近寄るなと言いたげな目。侮辱したような目。
ローラも負けじと微笑んだ。
「じゃあ私が初めての友達になってやる」
少年は鬱陶しげに視線を逸らした。