the End of the Chain
「姫」
女の騎士が歪んだ階段を降りる姫に手をかざす。姫と呼ばれた女性は微笑みながら手を取る。
ずっと二人でこの空間を歩いていた。出口の見つからぬこの空間を…。
そう。見つからぬ限り歩いてゆくだろう。この時の止まった空間の中を。
「ねぇ、まだ居たの?」
現れては消え、現れては消える、ローブを深く被った謎の少年。少年は出口を知っているだろうか。
「お前は出口を知っているのか?」
女騎士は少年に訊ねた。
「出口はすぐそこにあるよ。…分からないかい?」
可笑しそうに笑う少年。女騎士は周りを見渡すが、出口などそこに無い。
「大切に思っていた物がもし偽物だったら?その手は本物かい?」
まさかと姫を見てみるも、そこにはいつもの姫の優しい顔。偽者のはずが無いと女騎士は確信する。
「からかうのもいい加減にするがいい。お前は本当に知らないんだな。」
「はいはい、まだ気付かないならそれで結構。ねぇ、僕も付いて行って良い?」
「なぜ?」
「見届けたいから。君がちゃんと真実に気付いた時どんな顔するんだろうって。泣くのか喚くのか怒るのか。
意外と平気だったりしてね。」
「ふん………良かろう。勝手に付いて来い。ちょうど退屈していたところだ。」
姫が横に居るにも関わらず、何故退屈しているのか。いつも大事にしていたはずなのに…。そう。
姫は一言も喋らない。彼女は既に死んでいる。目の前に居る彼女は私の記憶だと。私は知っている?
女騎士はブンブン首を振ると再び出口を求め、姫を連れ歩き出した。
彼女はずっと目を覚まさない。
「舞…」
額にそっと手で触れるも返事は無い。
あの戦い以来彼女の意識は戻って来なかった。
「約束したよな……終わったらまた一緒に暮らそうって…。お前はこの姿のままで良いのか?
ずっと夢の中で良いのか…?」
「藤宮君……舞の調子は、どう…?」
長い黒髪の清楚な女性……それは「姫」と呼ばれた女性に酷似していた。その彼女が青年の顔を窺うように
訊ねた。
「……いや…」
それだけ答えると彼はガラス越しに夕日を見つめた。彼女もつられて夕日を見た。
ただ、その彼女の顔は何処か悪魔めいていた。
「ねぇ…藤宮君。舞を助ける方法が一つだけあるの……」
もう、落ちてゆく彼女を止められる者は誰もいない。
「よう、蓮。また会ったな」
箒に乗った幼い少女が高い空からローブの少年に話しかける。
「や、久し振りヒメちゃん。この子ウィッチのヒメちゃんて言うんだ。今日は一体どうしたんだい?」
箒から降り、とことこと賢そうな少女が近付いてくる。少女は姫の顔を見ると顔をしかめた。
「忌々しい魔女だ。未だ死んでおらんのか」